THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』

 

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(字幕版)

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(字幕版)

  • 発売日: 2014/12/24
  • メディア: Prime Video
 

 

 宇宙盗賊団に所属していたがお宝を持って逃げ出したピーター・クィル=スターロード(クリス・プラット)がひょんなのことから女性改造人間のガモーラ(ゾーイ・サルダナ)や元人間でアライグマに改造されてしまったロケット(ブラッドリー・クーパー)、植物生命体のグルート(ヴィン・デーゼル)や大男のドラックス(デイヴ・バウティスタ)と同じ刑務所に投獄される。そして、脱獄計画を一緒に練ったことを通じて、5人の無法者はチームを組んで行動することになり、虐殺をはたらく悪の将軍であるロナン( リー・ペイス)との戦いを通じて、やがて本当の仲間としての絆が芽生えていく…というストーリーだ。

 数あるアメコミ映画のなかでも、「少年漫画」としての面白さをいちばん持っているのがこの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズである。『アベンジャーズ』や『ジャスティス・リーグ』とは違って仲間たちは元々が無法者なうえに、たいした能力を持っていなかったり重大な欠点を抱えていたりするのだが、それがチームになることでお互いの欠点を補ったりコンビネーションを駆使することで本来以上の力を発揮できるようになって、強力な能力を持った相手にも対抗できるようになる…というストーリーは王道であるが、映画では意外と見かけないものだ。主人公たちが善悪にとらわれ過ぎない豪快な無法者であることからも、日本の漫画で例えると『ONE PIECE』に近い面白さを持った作品であるといえるだろう。

 主人公のピーターを除けば仲間たちはいかにもエイリアン的な肌の色をしているか、異形である。そのため、この映画の公開当時に予告編や宣伝などを眺めていたときには「こんないかにもカートゥーンな連中が活躍するストーリーが面白くなるかな」という不安があった。実際、最初に劇場で見たときには違和感の部分も多過ぎて万全には楽しめなかった気がする。しかし、後の『ガーティズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』や『アベンジャーズ』シリーズなどを鑑賞した後にはガモーラやロケットなどの面々にもだいぶ感情移入できて人間味が感じられるようになったので、今回再視聴した際には充分に楽しめた。 

 そして、よく見てみるとキャラクターの造形もかなり優れている。5人組という映画にしては大所帯であるのだが、それぞれの特徴をバランスよく描くことに成功しているのだ。特にガモーラは肌が緑色なうえに強面な顔をしているが、段々とセクシーさや可愛らしいさが感じられるようになる。ピーターにキスを迫られたときに慌てて武器を向けるシーンなど、歴戦の強者であるが異性経験は乏しいという設定がよい(この設定も日本の漫画ではよくある設定だがアメコミでは珍しい気がする)。また、比喩や隠喩が通じず常にマイペースなドラックスはコメディリリーフとしての面白さが抜群だ。見た目にフックのあるグルートやロケットばかり注目されがちだが、この映画の面白さはむしろドラックスの方が支えている気がする。

 また、主人公であるピーターはMCUの主役級ヒーローのなかでは文句なく最弱であり、アイアンマンやソーのように派手な武器もなければキャプテン・アメリカのような強力なパワーもなく、頭脳だってすごいとは言えない。そんな彼が機転を利かしたり自己犠牲の精神を発して活躍するところも少年漫画的だ。

 ガーディアンズの面々以外にもいいキャラが揃っている。たとえば盗賊団の団長である主人公の養父であるヨンドゥ( マイケル・ルーカー)にはアウトローとしての魅力があり、悪役のロナンに侵攻されることになるノバ国の警察であるローマン・デイ( ジョン・C・ライリー)も役者のおかげでいい味を出している。また、悪役のロナンはテンプレ的なキャラクター設計でありながらもMCUの大ボスであるサノスに逆らったり自分に挑んでくるガーディアンズの面々を何度も返り討ちにするなど、敵役としての貫禄やキャラクター性がしっかりと描写されている。ロナンの格がしっかり示されているからこそ、終盤での「ダンスバトル」やガーディアンズの面々が手を繋ぎあって対抗するシーンが映えるのだ。

 作中のテーマとしては、血の繋がった「家族」や「親子」の関係と「仲間」(疑似家族)の関係が強調される。これまた少年漫画のテーマとしては王道的なものでありながら、アメコミ映画としては意外と見かけないテーマであるため、安定して感動や充実感が抱ける作風となっている。

スター・ウォーズ』的な世界観のためにモブキャラクターもいちいちカラフルで異形なところや、宇宙船同士の艦隊戦シーンもしっかり描かれるところは、贅沢だともいえるし情報量が多過ぎて詰め込みすぎだとも言えるだろう。目がチカチカするというところはなくもない。しかし、欠点はそれくらいだ。むしろ、これだけ要素が多い映画なのに破綻なくまとめて最初から最後までテンポよくクライマックスにはかなり盛り上がる構成にできていることはさすがと言えるだろう。アメコミ映画どころかエンタメ映画全般においてもなかなか見られないような完成度を誇る作品だ。