THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『シンドラーのリスト』

 

 

シンドラーのリスト(字幕版)

シンドラーのリスト(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 名作であることは間違い無いのだが、『戦場のピアニスト』と同じく、長過ぎる。印象的なエピソードは多々あるのだが、逆に印象的でないというかホロコーストものや戦争ものとしては"よくある"エピソードも多いので、特に中盤は散漫になっていることは否めないだろう。

 

 とはいえ、主人公のシンドラーリーアム・ニーソン)の人間性の描写や、彼の相棒のシュターン(キングズレー)との関係性の描写はさすがのもの。また、開始から1時間ほど経って「さすがにダレてきたな」というあたりで、シンドラーの"ライバル"であり"悪役"であるアーモン・ゲート少尉(レイフ・ファインズ)にスポットライトを当てることでメリハリを付ける、という構成もうまい。

 一部の人は「当初は俗物で性悪だったシンドラーが途中から聖人のようになっていて、その急な変遷に違和感を抱いた」という感想をもったようだが、シンドラーはプラグマティックであるがゆえに頭が柔らかく寛容で開明的、という描写が序盤からされているのだという風にわたしは解釈したので、そこも気にならなかった。

 ユダヤ人たちが史実通りに死ぬシーンはいくつもあるが、最も印象に残るのはゲートによって放免されたかと思ったら射殺されてしまう少年の死(または、本編中で唯一"色"が付いている、赤色のコートを着た少女の死)であることは間違い無いだろう。

 クライマックスにてシンドラーが自動車や金のバッジに触れながら「これを売ればあと10人、これを売ればあと2人救えたのに…」というシーンでは、不謹慎ながら効果的利他主義を連想してしまった(そういえば効果的利他主義の提唱者であるピーター・シンガーユダヤ系だ)。

 連絡ミスでシンドラーの工場に戻されるはずだったのがアウシュヴィッツに連れていかれて、そしてあわやガス室に…と思ったら普通のシャワーでした、というシーンはスリルがあるとはいえちょっと悪趣味さが勝っているとも思う。ここら辺は、深刻な歴史的事実を扱いつつ映画としてのエンタメ性や物語性も両立させることの難しさが出てしまっていると言えるだろう(わたしの回答は「最初から上映時間を2時間くらいに収めていたら、後半でいかにも映画っぽいスリルシーンを入れる必要もなくなったでしょ」というものだが)。

 本編が白黒であるのは、赤い服の少女の死や終盤における現代パートとの対比を映えさせる狙いが主であるのだろうが、ユダヤ人や裸になるシーンのエロティックさや異物感を消して悲惨さだけを描く、という効果もあると思う。ベッドシーンも何度かある作品であるがこれも白黒なだけにエロティックではなく、余計な感情を生じさせずに物語の本筋に集中させることに成功している。

 また、建前であるとしても実用的な技能があれば生き残り、「歴史と文学を教えられる」だけじゃ生き残るに足りない、という"選別"の残酷さはなかなかのものである。わたしの学生時代の友人に在日コリアンがいて、彼の家庭では「社会がどうなっても自分は生き残れるようになるために、高度な技能を身につけろ」という教えがあり、実際にその友人は医者になったりその弟は弁護士になったりしているのだが、マイノリティ・被差別者にとっては"技能"の有無が人生や生死を分けることがある、というのはどこの場所でもいつの時代にも通じる事象であるのだろう(だからこそ、特に技能を持たない自分は救われることもなくあの時代のドイツやポーランドにいたらい真っ先に死んでいた可能性が高かったわけであり、ゾクッとした)。ここら辺は、音楽という"役に立たない"技能を持つ主人公が生き残る物語である『戦場のピアニスト』とも対比になっていると思う。

 他には、トイレに隠れた少年が先客の子供たちから「出ていけ」と言われるシーン、シンドラーとアーモンとの「力」や「許し」をめぐる会話が印象的だった。

 

 とはいえ……この映画も例によって最初に見たのは10年ほど前の大学生であったときだが、当時から、「たしかに良い映画だけど、そこまで絶賛されるほどのものかな」という感想を抱いていた(たしか『戦場のピアニスト』の方により感動していた記憶がある)。

 たとえば、同じスピルバーグの映画なら『ブリッジ・オブ・スパイ』の方がキャラクター描写がさらに鮮やかで映画としてのメリハリも利いていて、ずっと感動できる。描かれている事実の重たさや深刻さのためにみんな映画作品としての評価が甘くなっているんじゃないの、という気はしないでもない。

 まあ、「ホロコーストものの映画といえばまずは『シンドラーのリスト』(次点が『戦場のピアニスト』か『ライフ・イズ・ビューティフル』?)」という定評があることは間違いないし、戦争ものやホロコーストものの映画が数多く作られた後の現代であるからこそこうやって文句や贅沢を言える、ということもたしかであるけれど…。