ひとこと感想:『スパングリッシュ:太陽の国から来たママのこと』&『シーラーズの9月』&『7500』
●『スパングリッシュ:太陽の国から来たママのこと』
高校生の時に観て以来だから13年ぶりくらいの再視聴。さすがにストーリーの内容はほとんど忘れていた。
夫のジョン(アダム・サンドラー)と妻のデボラ(ティア・レオーニ)のクラスキー夫妻の元にメキシコ人移民のフロール(パス・ベガ)が家政婦として働き始める。アメリカ人らしくエゴイズムが強くて見栄っ張りで虚飾に満ちたデボラは娘(サラ・スティール)との仲もうまくいっておらず、ジョンは繊細で優しくはあるがデボラの尻に敷かれているために家族をリードすることができない。そんな問題含みのクラスキー家であるが、デボラやその娘クリスティーナ(シェルビー・ブルース)との交流によって徐々に問題がほぐれていって(逆に問題が悪化するタイミングもあるけれど)……という感じのストーリー。
2004年の作品であるが、2020年に見てみると「マジカル・ニグロ」(マジカル・ラティーノ?)とかオリエンタリズムとかのワードが頭にチラついて仕方がない。特に、終盤でジョンとフロールがキスをするシーンはなかなかグロテスクで、「クラスキー家にとって都合良すぎるお話でしょ」と思えて仕方がない。フロールがめちゃくちゃセクシーな体型をしており、服装も相まって屈むたびにおっぱいが強調されるのも、この設定だとなんだかイヤな気持ちにさせられる。移民のメイドに対する性的加害はよく問題視されるわけであって……。お話としても、まあまあポジティブではあるものの陳腐であることは間違いない。現代ではまず作られない作品であるだろう。
また、最後にフロールが娘を白人家庭や白人たちの私立学校から引き剥がしてメキシコ系移民たちの集団に戻すところだけは民族アイデンティティの尊重をあーだこーだすることができていて、ここだけは現代のポリコレ規範から見てもOKとされるだろうが、(いちおう自身も"移民二世"である)わたしから言わせると、親のエゴイズムが感じられてたまったものじゃなかった。多文化主義とか反同化主義ってやっぱり良し悪しだな、と思う。
●『シーラーズの9月』
『戦場のピアニスト』を見たついでに同じくエイドリアン・ブロディ主演のユダヤ人ものである本作も見てみたが、まあつまらない。どっかで聞いたことのあるようは既視感しかないBGMも陳腐でキツい。
序盤で、金持ちであるユダヤ人実業家の奥さん(サルマ・ハエック)に雇われていたイラン人家政婦が溜まっていた鬱憤を打ち明けるところだけは興味深かった。つい宗教的な部分にばかり注目がいってしまうイラン革命であるが、資本家階級に対する民衆の叛逆、というただしく階級闘争的な側面もあったわけだ(だからこそ、ユダヤ人がスケープゴートにされてひどい目に遭わされた、ということでもあるのだろうけれど)。
●『7500』
ジョセフ・ゴードン=レヴィットが主演ということで見始めたけど、びっくりするくらいに地味でつまらない。ショボいテロリストたちとションボリ顔の副機長が、延々とコクピット内でやりとりしたり駆け引きしたりたまに戦闘したり、というだけ。低予算の実験的作品ではあるんだろうけど、あまりに内容がショボ過ぎて、本来なら作品が醸し出したいのであろう緊張感を感じてあげる気にすらならなかった。