THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

ポリコレ

2021年:映画ベスト10&ワースト5

感想記事を書いた映画については感想記事へのリンクを貼ってます。『ドント・ルック・アップ』と『ラストナイト・イン・ソーホー』の感想記事もそのうち書く。 1位:フリー・ガイ 2位:モーリタニアン 黒塗りの記録 3位:ラストナイト・イン・ソーホー 4…

『エターナルズ』:多様性と人間中心主義

マーベル映画の「ポリコレ性」についてはこのブログでも何度か論じてきたが、基本的に、『ブラックパンサー』や『シャン・チー』のように「主流派の文化やアイデンティティとは異なる文化やアイデンティティが秘めている魅力やパワー」を強調した、ポジティ…

『最後の決闘裁判』:価値観を"揺さぶる"のではなく、価値観を"確認する"作品

まず書いておくと、この映画を観たのは公開の翌週の日曜日だ。そして、たった一週間とはいえ、(完成度の高い名作であり、人が言及したがる内容のために)Twitterで様々な感想が目に入ってしまい、明確なネタバレはなかったけれど「どういう作品であるか」と…

『コブラ会』の男らしさ

theeigadiary.hatenablog.com 『コブラ会』、実に面白いのでシーズン3まであっという間に見てしまった。 シーズン2からは、登場人物たちのしょうもない三角関係や、会話や情報伝達が不足によるくだらない誤解による大騒動と悲劇、映画だったらすぐに解決し…

『刑事コロンボ』

刑事コロンボ 完全版 コンプリートDVD-BOX ピーター・フォーク Amazon わたしが映画を本格的に見始めたのは高校2年生の春休みからなんだけど、当時はミステリーファンでもあった。それで『刑事コロンボ』を見始めたのは高校3年生の夏休みからだ。『ジョジ…

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』:ボンドが「有害な男らしさ」から脱却しちゃった

一年半も公開が引き延ばされたクレイグボンドの最終作を、満を持して鑑賞。事前にPrimeVideoで007シリーズが前作配信されたことでクレイグボンドの過去作品を観返すことができて、ヒロインのバックグラウンドとか「ミスター・ホワイト」というキャラクターが…

『善き人に悪魔は訪れる』+『ザ・ハント』+『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク 』

●『善き人に悪魔は訪れる』 善き人に悪魔は訪れる [DVD] イドリス・エルバ Amazon あらすじだけを読むと「なんだかありがちだしほんとうに面白くなるの?」という不安感を抱かされるが、格好いい放題やイドリス・エルバという存在感のある主演俳優に惹かれて…

『007』シリーズ:『ロシアより愛をこめて』+『カジノ・ロワイヤル』+『慰めの報酬』+『スカイフォール』

ロシアより愛をこめて (字幕版) ショーン・コネリー Amazon カジノ・ロワイヤル (字幕版) ダニエル・クレイグ Amazon 007 / 慰めの報酬 (字幕版) ダニエル・クレイグ Amazon 007 / スカイフォール (吹替版) ダニエル・クレイグ Amazon わたしは『007』シ…

『フィアー・ストリート』三部作

www.netflix.com 一作目を観たところで男性キャラクターの扱いの悪さとレズビアン推しにイヤな予感がして、検索したところ案の定、「ホラー映画のミソジニー性や異性愛規範」を批評的に反転させてシスターフッドやフェミニズムを描いているなんたらかんたら…

『マインドハンター』

1960年代末〜1970年代初頭を舞台にして、猟奇殺人者や連続殺人鬼たちの「プロファイリング」を行うFBI行動科学班の黎明期や創設当初を描くドラマ。半年以上前にシーズン1の途中まで観て中断していたのだが、再開するとシーズン2の最終話までのめり込んで観…

『モンタナの目撃者』&『ウインド・リバー』

ウインド・リバー(字幕版) ジェレミー・レナー Amazon 現代風西部劇(モダン・ウエスタン)を十八番とするテイラー・シェリダンであるが、わたしは彼が監督したり脚本したりした作品を観るたびに、同じく現代風西部劇を映画ではなく小説で展開している作家の…

『KATE/ケイト』

www.netflix.com 某ポリコレ系ツイッタラーが公開もされていないうちから「日本人差別的な作品だ」と決めつけて文句つけていたので、「それならば褒められるところ探しちゃろ」と逆張り的な気持ちが湧きあがって楽しみになり、公開当日にさっそく観ちゃった。…

『ロング・ショット』&『ミッドナイト・スカイ』&『チェリー』&『真実の行方』

●『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』 ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋(字幕版) シャーリーズ・セロン Amazon 同じジョナサン・レヴィン監督の『50/50』は面白かったし*1、シャリーズ・セロンという豪華な女優を起用していたり「年上エリ…

『レベッカ』&『ベケット』&『シカゴ7裁判』

●『レベッカ』 www.netflix.com ヒッチコック作品のリメイク。昨年に予告を観た時から期待していたし、前半はリリー・ジェームスとアーミー・ハマーの演じるラブロマンスが実に美しくてワクワクしたが、サスペンスがメインとなる後半になってからは尻すぼみ…

『黒い司法』&『マ・レイニーのブラックボトム』&『42~世界を変えた男~』

theeigadiary.hatenablog.com 「白人に都合のいい物語」ばっかり見るのもよくないなと思って、もっとまじめに人種差別の問題に取り組んでいそうな映画をいくつか見た。 しかし、差別の問題について"真剣に"とか"都合の良さを抜きに"取り組むことって、やはり…

『グリーンブック』と『ベスト・オブ・エネミーズ~価値ある闘い〜』

ベスト・オブ・エネミーズ ~価値ある闘い~ (字幕版) ウェス・ベントリー Amazon ちょっと映画離れしていたころにたまたまNetflixで『ベスト・オブ・エネミーズ』を観てみたところ、これがなかなか面白く、映画に対するモチベーションを取り戻させてくれた。…

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』:マイノリティとヒーローのジレンマ

www.j-cast.com 四年前に芸人が番組で「ファルコンは弱いからアベンジャーズ空脱退するように説得しよう」という企画を行って、大炎上した。アンソニー・マッキーが演じるファルコンが弱いかどうかはともかく(空を飛べるぶん。ホークアイやナターシャや初代…

『ブラック・ウィドウ』

theeigadiary.hatenablog.com ・わたしはアベンジャーズの面々のなかではブラック・ウィドウがいちばん好きだし、トップクラスに重要なキャラだと思っているので、彼女の単独映画が公開されたのは喜ばしい限り。 ・女性ヒーローが主人公ということで否応なく…

『ワンダーウーマン1984』

劇場に映画を観に行ったのは黒沢清監督の『スパイの妻』以来で、およそ二ヶ月ぶり*1。 わたしはマーベル映画のなかでは『キャプテン・マーベル』がいちばん嫌いなのだが*2、逆に、この映画の前作の『ワンダーウーマン』はDC映画のなかでもいちばん好きな作品…

『アメリカン・スナイパー』

アメリカン・スナイパー(字幕版) 発売日: 2015/06/10 メディア: Prime Video このあいだ『ミリオンダラー・ベイビー』を再視聴したら以前観たときよりもずっと面白く感じられたのだが、同じイーストウッド監督の『アメリカン・スナイパー』については、公開…

『ソーシャル・ネットワーク』

ソーシャル・ネットワーク (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video 2010年の劇場公開当時以来なので、ちょうど10年ぶりの再視聴。フィンチャーの作品は『セブン』にせよ『ゴーン・ガール』にせよ再視聴してみると「こんなに面白かったんだ」と驚…

『コーチ・カーター』

コーチ・カーター (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video カリフォルニア州・リッチモンド高校は落ちこぼれや貧困層の若者が集まる学校であり、生徒の大半がアフリカ系アメリカ人であるということもあって、卒業生の多くは逮捕されて刑務所で過…

『ザ・ファイブ・ブラッズ』

www.netflix.com 原題は『ダ・5・ブラッズ』(これくらい原題通りのタイトルにしてしまえばいいと思う)。スパイク・リー監督による、ベトナムに従軍した黒人兵士たちの物語。マルコムXやキング牧師を思い浮かばせるカリスマ的な隊長ノーマン(チャドウィッ…

『ミリオンダラー・ベイビー』:安楽死映画とか障害者差別映画とかじゃねえんだよ

ミリオンダラー・ベイビー (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video 『グラン・トリノ』劇場公開当時、朝っぱらから大学の図書館でこの作品を観て、夜になってから劇場まで『グラン・トリノ』を観に行った思い出がある。というわけで12年ぶりの再…

ひとこと感想:『スパングリッシュ:太陽の国から来たママのこと』&『シーラーズの9月』&『7500』

●『スパングリッシュ:太陽の国から来たママのこと』 スパングリッシュ (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video 高校生の時に観て以来だから13年ぶりくらいの再視聴。さすがにストーリーの内容はほとんど忘れていた。 夫のジョン(アダム・サン…

『ファイト・クラブ』

Fight Club (字幕版) メディア: Prime Video ジョセフ・ヒースの『反逆の神話』を読んでいるうちに観たくなったので、10年ぶりくらいに再視聴。 ヒースが指摘しているようにいまでは陳腐化したカウンターカルチャーの価値観が多少作品に反映されているので、…

『パブリック:図書館の奇跡』

エミリオ・エステベスの監督兼主演作品。 オハイオ州シンシナティの図書館職員の主人公(エミリオ・エステベス)は、トイレや水道を利用したり暖をとるために図書館を利用したりしているホームレスたち(リチャード・T・ジョーンズ、マイケル・ケネス・ウィ…

『ブックスマート:卒業前夜のパーティーデビュー』:「誰も傷つけない笑い」が排除するもの

カリフォルニアのハイスクールに通うモリー(ビーニー・フェルドスタイン)とエイミー(ケイトリン・ディーヴァー)は、良い大学に進学するために遊びには目もくれずに勉強に明け暮れていた。その甲斐もあってモリーはイェール大学への進学が決定していたし…

『Search/サーチ』

Search/サーチ (字幕版) 発売日: 2019/01/11 メディア: Prime Video 「100%すべてPC画面の映像で展開」がウリの、ミステリー映画。……といっても、途中からはスマホでの画面付き通話(Facetime)とかTVニュースの映像が登場するようになって、「100%すべてPC…

『プロメア』:寒々しさが付きまとう“熱血”アニメ映画

プロメア 発売日: 2020/05/24 メディア: Prime Video 突然変異して身体から炎を発火して操れるようになった新人類「バーニッシュ」の登場により人口の半分が亡くなる事件が起こってから30年後、バーニッシュへの対策が行われて文明がやや発展した世界におけ…