THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

ひとこと感想:『7番房の奇跡』&『羊飼いと屠殺者』&『LOOPER/ルーパー』

 

●『7番房の奇跡』

 

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 もともとは韓国映画だが、トルコでリメイクされたバージョンを鑑賞。トルコ映画なんかなんてなかなか見る機会がないし、「ファンタジー色や感動色が強すぎる韓国版よりも抑えめなトルコ版の方が面白い」という評判を見かけたから。

 しかし、これで「抑えめ」かい、と思ってしまうくらいにこちらでも荒唐無稽さと感動の押し付けがひどい。特に「ここで感動してください」と言わんばかりのBGMがうざかった。女の子は可愛らしいし、知的障害者を演じる主演の人も演技が上手いし、脇役のギャングのおっさんも雰囲気が出ているとは思ったのだが、このストーリーはやっぱりキツい。特に、証人が射殺されるシーンは『ショーシャンクの空に』の丸パクリみたいな感じで「はあ?」って感じだった。あちらと違ってこちらでは殺害に必然性がないし…。いちおう死刑反対というメッセージは込められているみたいだが、それどころではないと思う。

 

●『羊飼いと屠殺者』

 

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 南アフリカの映画。『7番房の奇跡』と同じく死刑の問題を扱っているが、あちらとは打って変わってリアルで重苦しい、社会派な映画だ。

 が、今度は真面目過ぎて面白くない。「看守が死刑執行をやらされること」によるトラウマとかそういう制度の非人道性が強調されており(『羊飼いと屠殺者』というタイトルもまんまそれを表している)、そのメッセージには同意できるのだが、わざわざミステリー仕立ての法廷劇をされなくてもそんなことはわかっているんだよ、という感じだ。そして、ミステリー風であったり法廷劇であったりしながらもエンタメ性には欠けるので、興味が持続するわけではない。「なぜ青年は殺人を犯したのか」という問いへの答えは説得力に欠けるものだったし…。もっと面白い死刑反対映画がアメリカにはいっぱいあるので、南アフリカ特有の事情が反映されていることを考慮しても、わざわざこの作品を観る必要はそんなにないよなあと思った。

 

●『LOOPER/ルーパー

 

LOOPER/ルーパー (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 

 ジョセフ=ゴードン・レヴィットが30年後にはブルース・ウィリスになってしまうお話。

「30年後の未来ではタイムトラベルは開発されたのちに違法になったけどギャング団は非合法にタイムトラベルを利用しており、未来だと死体の処理が不可能になったので殺したい人間を過去に送り込んで処理している。その処理を担当する現代の殺し屋は、30年後に殺される運命であり、現在の自分自身が未来の自分を殺すというルールである」という持ってまわった異様な設定はどう見ても非合理的であるが、殺しの場面の絵面とか「自分で自分を殺す」という皮肉さなどが面白くて、掴みはバッチリという感じだ。そして、いざブルース・ウィリスがジョセフの元に登場した後の諸々の展開ではタイム・トラベルものが普通配慮する常識をかなぐり捨てていて「そうはならんやろ」という矛盾が盛り沢山であるのだが、まあそういう強引さも悪くないかもしれない。

「タイム・トラベルができたならヒトラーを殺すか?」的な定番のジレンマをテーマにしているところ、そこに「過去の自分が未来の自分を殺そうとするとどうなる?」という展開が交じるところが、この映画の後半の展開のキモである。……しかし、Xメンのダーク・フェニックスじみた安っぽい超能力がキーとなってしまったり後半に登場した人物たちが物語的には主人公よりも重要な存在になってしまったりと、テーマを描くための設定や構成がうまくいっていない。前半には「現在の主人公と未来の主人公」の物語が結構な尺を取って描かれるのに、後半になると急に置いてけぼりになってしまうのだ。特にブルース・ウィリスの存在感のなくなりっぷりはひどいものである。

 他の人の感想を見てみても「急に超能力が出てきてタイム・トラベル要素がかすれてしまったし、そもそもタイム・トラベルものとしては矛盾点が多過ぎてひどかった」という感想が大半なようである。まあ惜しい作品であるだろう。