THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

ひとこと感想:『アリー/スター誕生』『シントイア・ブラウン: 裁きと赦し』『成果』

 ●『アリー/スター誕生』

アリー/ スター誕生(字幕版)

アリー/ スター誕生(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/03
  • メディア: Prime Video
 

 

  なんかやたらと古臭いストーリー展開だなと思ったら大昔の映画のリメイク作品であると知って、さもありなんと思った。

 アリー(レディー・ガガ)の歌を聞いたジャック(ブラッドリー・クーパー)が衝撃を受けて彼女をプロの世界に引き上げて、アリーは瞬く間にスターへの階段を駆け上がっていく代わりにジャックは酒に溺れていって…というストーリーには王道の良さがあるが、「アリーがスターダムを駆け上がる」描写よりも「ジャックが酒に溺れて堕落していく」描写の方に力が入っているせいで、話の内容が暗くてスッキリしないものになってしまっている(というか、邦題から想像されるのとは逆に、主役はアリーではなくジャックであるのだが)。

 音楽がテーマの映画らしくジャックやアリーがなにかしら歌っているシーンがやたらと多いのだが、ダンスという視覚的な面白さも担保されるミュージカル映画ならともかく、ただステージで歌手が歌うだけの場面を何度も挿入されても単調さがすごい。また、予告編にも抜擢されておりいちばんアガる歌唱シーンである「Shallow」の場面が物語の前半で描かれるために、その後の歌唱シーンが精彩に欠けることになってしまっている。

 ところで、レディー・ガガは奇抜な格好をしているイメージが強くて良い印象を抱いていなかったが、まともな格好をしていたら普通に可愛いと思った(だから、「鼻がブサイクだからスターになれない、とプロデューサーたちに言われた」と愚痴るシーンはイマイチ説得力がなかった)。あと、レディー・ガガってスカーレット・ヨハンソンと顔がかなり似ている。

 

●『シントイア・ブラウン: 裁きと赦し』

 

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 シントイア・ブラウン事件の顛末を追ったドキュメンタリー。16歳で買春していたら客に自宅まで連れて行かれて身の危険を感じて射殺したシントイア・ブラウンが一時は終身刑になってしまうが、「性暴力に対する正当防衛であったのに終身刑とは不当だ」と女性セレブたちが恩赦を訴える運動をSNSで行い州知事の任期終了間近であったことも功を奏して見事に釈放されるまでが描かれている。

 このドキュメンタリーも、もちろんのごとく、シントイア・ブラウンに対して同情的な作りになっている。シントイアの育った環境のひどさや彼女が胎児性アルコール症候群という先天性疾患を持っていたことが強調されて、彼女の暴力性は生まれや環境の影響なのだ……と観客がシントイアのことを赦したくなるように誘導する流れになっている。まあたしかに終身刑はやり過ぎだろう、とは思う。

 一方で、殺害された被害者である男性の言い分は「死人に口なし」とばかりにほとんど描かれていないところが象徴的だ(いちおう、終盤で、男性の知人であった女性たちがシントイア・ブラウンの恩赦に異議を表明する箇所はあるが)。事件発生時において男性は何をしようとしていてシントイアは何をしようとしていたか、ということはシントイアの口からしか語られない。そして、彼女の証言には偽証の疑いもある。この被害者男性の家族や知人でなくとも、殺害されてしまった後にその殺害犯を擁護するドキュメンタリーで追い討ちのように「公開処刑」される彼のことがちょっと気の毒になってしまうというものだ。

 

●『成果』

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 妻に振られた金持ち男性(ケビン・コリガン)、トレーニング・ジムのオーナー(ガイ・ピアース)と女性トレーナー(コビー・スマルダーズ)、三人の関係や苦悩や成長などについて書かれたヒューマンドラマ。

 いちおうは「筋トレ」がテーマというかフックになっており、わたしは最近ちょっとしたトレーニングを始めたところなので、序盤はわりと興味を持って見ることができた。…が、そこまで上手に「筋トレ」をストーリーに落とし込めているわけではない。コメディシーンはそれほど多くはないがシリアスなヒューマンドラマにもなり切れていないし、登場人物にはそれなりにリアリティが感じられるが魅力的というほどでもなくて、まあ大したことのない映画だ。

 敵対関係になったと思った男性二人が女性トレーナーが去ったことをきっかけに仲良くなる中盤の展開は、それなりに面白かった。あと、猫や犬が出てくるのは可愛らしくてよかった。