THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

ひとこと感想:『最高の人生の見つけ方』、『アイ・アム・マザー』、『ニンジャバットマン』

 

●『最高の人生の見つけ方

 

最高の人生の見つけ方 (字幕版)

最高の人生の見つけ方 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 かなり有名な映画ではあるのだが、わたしはこれまで未見で、今回はじめて視聴した。

 評価の高い映画であると思ってけっこう楽しみにしてとっておいたし、モーガン・フリーマンジャック・ニコルソンという名優が出ているのだからクオリティもさぞかし高いだろうと期待していたのだが、いざ見ると「うーん…」という感じ。主演二人のキャラクターにはそれなりに魅力はあるが脇役は書き割り的、ストーリーはところどころに脚本的な工夫はありながらも予定調和感がつきまとう。

 なにより、海外周遊をするパートになってからは違う異国に行くたびにモーガン・フリーマンジャック・ニコルソンがお着替えてしてBGMもそれぞれの国特有のエキゾチックなものになって……という演出がかなりダサくて、それでだいぶ白けてしまった。ジャック・ニコルソンがスカイダイビング中に歌うシーンも無性にイラっとした。

 

●『アイ・アム・マザー』

 

www.netflix.com

 

『ミリオンダラー・ベイビー』を見てヒラリー・スワンクが出ている映画をもっと見たくなったので、Netflixオリジナルのこちらを鑑賞。「娘」役の、主演のクララ・ルガアードも良かった。

 お話としては、『エクス・マキナ』をちょっと連想させるようなサイコパスAIもの。「母」と冠されたAI含めて女性しか登場人物が出てこないことも印象的だ。冒頭ではAIによる牧歌的な子育てシーンが挿入されてちょっと暖かな印象を受けるが、そこに隠された恐るべき事実を知るとゾッとする。後半まではずっとミニマムでクローズドな施設内で物語が展開するのだが、それが、AIの意識は空間を超えて連結しているという設定により「外」の世界が崩壊した原因と直結しているところもなかなか面白い。途中までは「母」か外部からきた「女性」か、どちらを信じればいいのか「娘」にも判断がつかないところもハラハラする。少しSFに詳しい人であれば予測できるような展開やオチではあるかもしれないが、設定的にも脚本的にもほとんど隙がない、技巧の優れた作品ではあると思う。

 ……とはいえ、AIもののスリラーって結局は機械風情が人間様相手に勝ち逃げしてしまう展開になったり、そもそもの事件の発端から結末までAIの掌の上だったりするので、人間様の一員であるわたしとしては見ていてイライラする。あとAIって表情はないし痛みはないしで、どうしてもやっつけてスカッとする展開にできないところも歯がゆい。

 シリアスなSFサスペンスであるために、『アップグレード』にあったような「遊び」やユーモアが感じられないところも、見ていてなかなかしんどい。『エクス・マキナ』のように映像的な美しさもないし、また現実の社会における女性と男性との対立の問題もオーバーラップさせていた『エクス・マキナ』に比べると、『アイ・アム・マザー』はタイトルから連想されるような「母性」に関する社会的な何かを描けているわけでもなく、あくまで虚構のお話を描くことに終始している。

 それでずっと真面目くさってシリアスなので、途中から飽きちゃうというか、「はいはいそういうお話なのね」って感じだ。SFをやるなら、ユーモアやアクションを入れてエンタメ性を加えるか、シリアスにやるなら現在の社会の問題を投影させてその物語を真面目に考える意味を観客に与えるかの、どちらかでなくちゃいけない。特にわたしはシンギュラリティとか「AIが人間を滅ぼす」的な未来予測は全く信じていないので、そのお話をそのまま描かれても興味が持続しないのである。

 

●『ニンジャバットマン

 

 

ニンジャバットマン

ニンジャバットマン

  • 発売日: 2018/10/10
  • メディア: Prime Video
 

 

 

 酒を飲みながらダラダラ鑑賞した。キャラクターが多すぎてストーリーはとっちからっておりゴミみたい。キャラクターに感情移入できる要素もなければ展開の面白さなども全くなく、「このキャラクターなら言いそうなセリフ」とか「バットマンのお決まりな展開」とかの「それっぽさ」をひたすらやるだけの作品。

バットマンのキャラクターたちが戦国時代にタイムスリップした」という設定は稀有なんだから、真面目にストーリーを練っていればいくらでも面白くできたと思う。たとえばタイムスリップするキャラクターを敵味方含めて5人くらいに絞って、その代わりに織田信長とかの実際の武将を出して、歴史改変やifの要素を追求する……などなどだ。

 ただ、そもそも「面白い作品」とか「優れた作品」を作る気が作り手の側にはハナからなくて、「日本のアニメーション技術でバットマンを描いてみる」という企画ありきの作品なのだろう。良くも悪くも「お祭り映画」なのだ。そういう視点で見てみると、実写版映画ではあまり活躍しないキャラクターも出てきたりして悪くなかった(真面目に見ると時間の無駄だが、酒を飲むついでに見るならアリだ)。特に、ゴリラが悪の天才博士であるという設定は、原作でもそうであるから仕方がないとはいえ、バカみたいで笑えた。ノーランとかベン・アフレックとかのシリアスな実写版バットマンでもゴリラが出てくるのを見てみたいと思った。